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授業内容詳細
宇宙飛行士たちが見た地球
作成日 2025年5月

20世紀、人類は初めて宇宙空間から地球の姿を目の当たりにしました。
それは私たちに何をもたらしたのでしょうか…。
きっと昔の人達は「地球はどこまでも続く平たい世界だ」と感じていたのでしょう。
しかし今から2400年ほど前には、「大地は球体なのではないか」と気づき始めた人達がいました。
500年ほど前には船乗り達が初めて地球を一周し、地球が丸いことを、身をもって体験しました。
そして今から63年前、人類は初めて地球外に出て、その全容を目の当たりにしたのです。

現代の私達は、宇宙飛行士たちや人工衛星が撮影した地球の画像を通して、地球が丸いことを知っています。
ただし、宇宙飛行士たちが見た地球の姿は、私達が写真で見るものとは随分と異なっているようです。
圧倒的な迫力で青く輝く球体が回転する姿を前にして、彼らは「これまで体験したことのない心境」に至ると言われています。

宇宙から地球を見た宇宙飛行士たちは、これまでに様々な言葉を残しています。
※以下、青色文章は書籍「宇宙からの帰還」立花隆著より抜粋。一部簡略化しています。
—その眺めは格別だ。人間がこれまでに見たことのない見方で地球を見ることができる。地球から離れるに従って、大陸や大洋が一目で見渡せるようになり、やがて、地球の球体としての輪郭が見えてくる。世界が一目で見え、全人類が私の視野の中に入ってしまう。夜明けの地域と日没の地域が同時に見え、地球が回転しながら時間が流れていく様を見ることができる。それはまるで神様の目で世界を見ているようだ。私は人間だけれども、目だけは神様の目を持っている。そんな体験をしているようだ。
—初めて丸ごとの地球を宇宙船の窓から見たとき、それはバスケットボ-ルくらいの大きさだった。それが野球ボ-ルほどになり、ゴルフボ-ルになり、そして月にたどり着いたときにはビ-玉ほどの大きさになってしまった。
—自分が今、ここに生きている。はるか彼方に地球がポツンと生きている。他にはどこにも命がない。どちらも何て弱い存在なんだ。無力で弱い存在が宇宙の中で生きているという事。これこそ神の恵みなんだと、何の説明もなしに実感できる。

彼らが宇宙から見たのは地球の美しい姿だけではありませんでした。その中に浮かび上がる都市部の大気汚染の有様や、稲妻のように瞬く戦火の様子も目の当たりにしていました。
—宇宙から自然のままの地球を見ていると、国境というものがいかに不自然で人為的なものであるかがよくわかる。それなのに、それをはさんで民族同士が対立し合い、戦火をまじえ、殺し合う。これは悲しくもバカげたことだ。私は軍人として生きてきた人間だから、どの戦争においても、戦争には戦争にいたる政治的歴史的理由があり、そうそう簡単には戦争がない時代がこの地球上に訪れそうにないということはわかっている。しかし、その認識があってもなおかつ、宇宙からこの美しい地球を眺めていると、そこで地球人同士が相争い、相戦い合っているということが、何とも悲しいことに思えてくるのだ。
—私達宇宙飛行士は、独特の精神的な体験を受けました。共通して言えることは、全ての人がより広い視野のもとに世界を見るようになり、新しい世界の見方を獲得したということだ。人間は皆同じ地球人なんだという事。国が違い、種族が違い、肌の色が違っていようと、皆同じ地球人であるということをこれからも私は伝えていきたい。

アポロ宇宙船の宇宙飛行士が撮った地球の姿は、多くの人達の心を揺り動かしました。そしてその時期から地球規模で物事を考えていく意識が目覚めたのです。地球を一つの生命体として捉える考え方が生まれ、地球環境を保護する様々な活動や法律が生まれ、平和を訴える運動も活発になっていきました。
アポロ宇宙船の話は昔の事の様に思えるかもしれませんが、人類の歴史の中で見ると、それはほんのつい最近の出来事。地球環境を守ったり世界平和を希求する活動は、まだ始まったばかりなのです。


この絵画造形クラスでは、宇宙の誕生から人類の現代までの道のりを、水彩や粘土などを使った造形活動と共に辿ってきました。
生き物たちが進化してきた道のり、植物たちが競争から共生という新しい扉を開き、動物たちが内的熱を有して卵を温め、親子関係を築き上げてきた流れは、地球上に新たに誕生した人間に引き継がれました。
今回の授業の後半では、私たちが成長と共に育んできた「愛」について考えてきました。
親からの愛を受けて育んできた、自分を大切に思う気持ち「自己愛」は、とても大切。
でも、自分さえよければそれでよい、という分けではありません。
自分の周りの家族や友達を大切に思う気持ち「家族愛、友達愛」は、とても大切。
でも、自分の知っている家族や友達が幸せであれば、それでよいのでしょうか。
自分が属する社会の集団を大切に思う気持ち「民族愛、愛国心」は、とても大切。
でも、自分と同じ民族や国が幸せであれば、それで本当によいのでしょうか。
そう、つい最近に起きた世界大戦は決して忘れてはならない出来事です。
これらの愛だけでは真の平和をもたらすことはできません。
宇宙飛行士たちが地球の姿を目の当たりにして得た新しい意識。
それを一言で表すならば「人類愛」ではないでしょうか。
生物と人類の長い歴史の中で、今やっとこの言葉の意味を見出すことのできる時代が訪れています。
私達はこの限りある美しい地球の中で共に進化してきた兄弟姉妹。
未来、より多くの人達がその地球の姿を目の当たりにした時、私達の社会は次の段階へと向かっていくのではないでしょうか。
そう、この先、どの様な困難が訪れようとも、私達人類の歩みはまだまだ続くのです。
(curiousこども絵画造形クラス 細井信宏)